ひとりで居酒屋を楽しむ——カウンター席の選び方と流儀
ひとりで居酒屋に入るのは難しくない。むしろカウンター席こそ、ひとり客のために設計された空間だ。入り方から注文、会計まで、ひとり居酒屋の実践ガイド。
亀田英佑
2026年3月14日
居酒屋のカウンターに、ひとりで座る。
それは旅の醍醐味のひとつだ。見知らぬ土地の夜、暖簾をくぐって引き戸を開ける。「いらっしゃい」という声を背に受けながら、カウンターの端に腰を落とす。目の前には、その土地の酒と肴がある。
入る店の選び方
ひとり旅で居酒屋を選ぶとき、最初に見るのは外観だ。
**カウンターが見える店を選ぶ。**入口から中が見える店は、ひとり客に親切なことが多い。カウンターにすでに何人かひとりで飲んでいる姿が見えれば、そこはひとりが歓迎される場所だ。
**暖簾が出ている時間を確認する。**旅先では店の営業時間を事前に確認しておく。人気店は早い時間から混み合う。夜6時前後に入ると、席を確保しやすい。
**地元の魚介や日本酒を置く店を狙う。**その土地の味を楽しむためなら、観光地の大通りより一本裏の路地を歩いてほしい。地元客が通う店には、旅行者向けの店にはない空気がある。
カウンターへの座り方
「カウンターに一名でもいいですか」——この一言で入れる店は多い。断られることはほとんどない。
カウンターの端、または壁際に近い席を選ぶと落ち着きやすい。両隣に見知らぬ人がいる席より、片側だけの方が気が楽だ。コートや荷物は隣の椅子に置かず、足元に収める。
席についたら、まずメニューを確認する。壁の黒板に今日のおすすめが書いてあることも多い。急いで注文する必要はない。少し眺めて、何を飲みたいか、何を食べたいかを考える。
最初の一杯と一品
最初の注文で、その夜のトーンが決まる。
**ビールより日本酒を選ぶ。**旅先の居酒屋なら、地酒を一合頼んでみてほしい。「地酒でおすすめはありますか」と聞けば、大概は答えてくれる。その会話から、店との距離が縮まることも多い。
**最初の一品は刺身か焼き物。**その土地の魚が食べられる場所なら、刺身盛りをひとり分頼む。「少なめでいいですか」と聞く必要はない。残してもいい。
一品頼んで様子を見て、気に入ったらもう一品。気に入らなければそれで終わりでいい。それがひとり飲みの自由だ。
大将や女将との距離感
カウンターの大将や女将と話すかどうかは、気分次第でよい。
話しかけてくれる店もあれば、そっとしておいてくれる店もある。後者の方が、個人的には好きだ。ひとりで飲む時間は、自分の内側に向かう時間でもある。
話したい気分なら「この魚は何ですか」「これはどこの日本酒ですか」と聞けばいい。よい答えが返ってきたら、そこから会話が続く。そうでなければ、また黙って飲めばいい。
旅先での一期一会の会話は、思いがけず深くなることがある。だが期待しすぎると、逆に窮屈になる。流れに任せるのがちょうどいい。
締めと会計
ひとり飲みの終わりは、だいたい自分で決める。
日本酒二合と肴を三品食べたら満足した——そう感じたタイミングで会計を頼む。「お勘定お願いします」の一言でいい。
旅先での飲み代は、安い店でも3,000〜5,000円、少し良い店で5,000〜8,000円が目安だ。旅の予算として最初から組み込んでおくと、気持ちよく払える。
ひとりで居酒屋に入ることは、その土地を最も身近に感じられる行為のひとつだ。
観光地を歩き、写真を撮り、土産を買う——そういう旅もある。だが暖簾をくぐって、カウンターで地酒を一杯飲む夜の方が、何年も記憶に残ることが多い。