強羅花壇、ひとりで泊まる覚悟と静けさ。箱根・強羅の露天風呂付き離れ
一泊10万円を超えてなお、ひとりで泊まる価値があるか。箱根・強羅花壇で過ごした夜と、会席料理、檜の露天風呂から見た星について。
亀田英佑
2026年3月13日
ひとり度
★★★☆☆
予算
1泊2食 110,000円〜(ひとり利用料金)
アクセス
箱根登山鉄道 強羅駅から徒歩5分
強羅花壇のひとり泊は、覚悟が要る。
料金の問題ではない。価格はたしかに高い——ひとり利用だと1泊2食で10万円を超える。だがそれより難しいのは、この宿がもともとふたりや家族のために設計されていることだ。離れの広さ、向かい合う椅子、ふたつ並べられた浴衣。あらゆる場所でひとりの輪郭が際立つ。
それでも来た。
強羅という場所
箱根・強羅は、温泉地としての喧騒から一段引いた場所にある。箱根湯本から登山鉄道で40分。急勾配を刻みながら登る車窓に、だんだん観光の匂いが薄れていく。強羅駅を降りると、空気が変わる。
強羅花壇は1931年創業。南箱根の山の斜面に、数寄屋造りの離れが点在する。庭は手入れが行き届いていて、歩くたびに足音が消える。
離れの夜
案内された離れは、8畳の和室と4畳半の次の間、そして露天風呂付きの専用テラス。ひとりで使うには広すぎる。使いこなせない広さが、かえって贅沢に感じるのは不思議なことだ。
檜の露天風呂は小さい。ひとりが入るのにちょうどいい大きさ。湯の温度は高く、夜の山の冷気と混ざって、顔だけが涼しかった。雲が切れると、星がいくつか見えた。
会席料理
夕食は部屋食ではなく、離れに近い個室で供された。
仲居が一品ずつ運んでくる。先付は甘海老と山菜の盛り合わせ、椀は蛤の潮仕立て。造里は神奈川の地魚で、それぞれの厚みと切り方が違った。
焼物は富士山麓の銘柄豚。強羅の宿にいながら、富士の食材が届く。山と山のつながりを感じる一皿だった。
ひとりで食べる会席は、会話のない分だけ料理に集中できる。皿の絵付け、盛り付けの角度、箸置きの形まで、視線が細部に降りていく。
翌朝
朝は霧の中だった。早起きして露天風呂に入ると、庭が白く霞んでいる。この景色を見たくて来た、と思った。
朝食は山の幸を中心にした和食。湯豆腐と干物と、ご飯のおかずが並ぶ。白いご飯が、やけにうまかった。
ひとり旅の採点
soloScore は3とした。満点ではない理由は、宿の構造がやはりふたり以上を前提にしていること。部屋の広さ、夕食時のテーブルの大きさ——設計の余白がひとりには少し大きい。
ただ、離れの露天風呂という構造は、ひとりに向いている。誰にも邪魔されない時間が、そこにある。
強羅花壇